なりたい仕事のことを知る ナリカタ

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頭で想像したものが現実になり、実際に乗れるようになるこの感動はほかの仕事では味わえないと思う

桑原 弘忠さん自動車デザイナー(日産自動車株式会社)

  • インタビュー内容・勤務先等は取材当時の情報となります

"キューブ"のモチーフはマグカップでした

『cube』は、キースケッチから生産車となる最終デザインまでを担当し、その後のマイナーチェンジもすべて桑原さんが手がけています。

スケッチは、スケジュール帳の裏に描かれたもの。「開発中は提案、提案の毎日でした」

高校3年のとき、自動車の免許を取得しました。この頃から自動車に興味を持つようになり、「クルマのデザインも楽しそうだ」と思うようになりました。それがきっかけでカーデザインの専門学校へ進みました。学校では、1日おきに徹夜しながら毎日数十枚のスケッチを描くという、厳しい課題を3カ月続けたり、「たくさんいるデザイナーのなかで、デザインが選ばれるのは1人」という厳しさを学び、自分のなかにハングリー精神を持つことができるようになりました。おかげで日産に入社してすぐにコンペに対応できるだけの実力とメンタリティの強さが身につきましたね。
日産自動車では、若者がクルマに対していままでにないタイプの愛着を持てる自動車として、"2代目キューブ"のデザインに携わりました。自分自身が20年は乗りたいと思える、リラックスして乗れる飽きのこないデザイン…。そういう気持ちで取り組む中で、コーヒーを飲むマグカップをモチーフにしたらどうだろうか、と思い、たくさんのマグカップを見て歩きました。また、特有の世代感から生まれるアイデアを、価値観の違う上司にうまく説明するのに苦労しました。そのキューブに今も乗っています。
集団で自律走行するロボットカー"EPORO"をデザインしたときは、生き物のように見せるため頭の動きを人に近づけるように、斜めにする工夫をしました。首のまわりのLEDリングの光のパターンなども、デザインから提案して採用されました。

カーデザインの仕事は、エンジニアをはじめ、いろいろな人と一緒に仕事ができ、想像したものを現実化して実際に乗ることができます。その喜びや、街で自分がデザインした自動車に乗っている幸せそうな人を見るときの感動は、ほかの仕事では味わえないと思います。
デザインにはそのときの"自分"がどこかに反映されると思います。ぼくの場合は、普段からおいしいものを食べたり、感性にうったえる映画や音楽を見聞きして、常にリラックスした自分でいられるように心がけています。