なりたい仕事のことを知る ナリカタ

  • ナリカタコラム
患者さんと患者さんのご家族が笑顔になったとき、この仕事をしていてよかったと思います

池原 えりさん作業療法士(医療法人財団 健貢会 東京病院 勤務)

  • インタビュー内容・勤務先等は取材当時の情報となります

患者さんと1対1でじっくりと向き合える仕事をしたい

祖父が家で療養することになったのですが、頑固な人で散歩以外、自分から何かやろうとはしなかったんです。それで、何かお手伝いはできないか、孫の私がこれをやってみてと言ったらやってくれるのではないだろうかと思ったんです。それが、勉強をしたいと思ったきっかけでした。親戚が看護師、介護士、歯科衛生士など、ほとんど医療系の仕事をしているんです。その影響からか、最初は心理学を学びたいと思い、そのあとは看護師を目指そうと思っていました。しかし、親戚の看護師に話を聞いてもらい、私は患者さんと1対1の時間が欲しいと思ったので、それであれば作業療法士がいいのではないかと教えてもらいました。作業療法士と決めたのは、高校3年の受験が始める直前の時期でした。もともと心理学に興味があり、カウンセラーになりたいとも思っていたので、精神科への就職も視野に入れて、精神科のカリキュラムがある作業療法士になろうと決めました。母は医療系ではないのですが資格を持っていて、私にも「何か資格のある仕事に就いてほしい」と望んでいました。

医療はみんな1からのスタート、やればやっただけの結果が出て楽しかった

私の作業療法士のイメージは、私自身が何か作ることが好きなので、粘土や積み木をやるものだ と思っていたんです。解剖学やら何やら勉強しなくてはならなくて、思っていたことと全然違うとびっくりしましたが、のちのち、それがあるんだったらと思って勉強しました。東京福祉専門学校に入学したのは、ちょうどよい人数で3年間学べることと、先生たちが一人ひとりを見ていてくれる感じがしたから。私は茨城から東京へ出て、いろいろなものを見てみたいと思いました。母も実家を離れて家のありがたみがわかるといいと思っていたようで、寮を勧めてくれました。勉強は大変でした。毎時間の授業の後に小テストがあり、ちゃんと起きていたり、勉強していた授業だと書けるんですけど、違うことを考えていたりすると書けなくて。それがちゃんと書けると、「あ、今日はちゃんと聞いていたな」と、毎時間自分の評価をされているようで、楽しかったです。また、医療系に関してはみんな1からのスタートなので、やればやっただけ結果が出るので、楽しかったです。印象に残っているのは、七宝焼などのアクティビティの授業。教科書を学ぶだけでなく、実際に作らせてもらえる授業が面白かったです。七宝焼は実際に精神科のリハビリに使われています。実習ではその工程が何の作業療法に必要かということを理解しながら経験することができたので、必要な授業だったと今になって実感しています。

3度目の受験で国家試験に合格、就職はまさにスタート

実は3年生のときに国家試験に落ちてしまったんです。そのときは限界といいつつも限界ではなかったので、やはり甘くないなと思いました。でも家にいると気持ちが離れていくので、学校で紹介していただいた老人保健施設や、整形外科の外来などでアルバイトをしていました。学生のときよりも大変でしたが、時間が限られていた方が集中して勉強できましたね。実は2年目も落ちてしまい、3度目の受験で合格したときは「やっとか」という感じがしました。私は3回目で国家試験に受からなかったらダメだと思っていました。就職試験の面接で「今年受からなかったらどうするんですか?」と聞かれたら自分の気持ちがなえてしまう気がして、確実に合格点がとれたとわかってから就職活動を始めたんです。ギリギリの時期なので、就職先も限られてしまったのですが、その中から探していきました。急性期リハビリテーションを勉強して、そのあと回復期リハビリテーションや介護老人保健施設に行くのが流れだということだったので、急性期のある病院を探してこの病院を受けにきました。人数が多いこと、勉強会があること、また学会発表が多い病院を探していました。面接のときはアピールしましたね。就職は本当にスタートでした。

猛スピードで進化する医療、毎日が勉強です

仕事は、もうすべてが大変ですね。技術はもちろん、やさしい方もいれば、気難しい人もいますから、そういう人の入り方だったり、モノを使うときの誘導の仕方、「どうしてこんなことをやらなきゃいけないの?」と言われたときの説明の仕方、そういう応用の仕方が難しいところがあります。また、リハビリをしていても効果がなかなか出ないとき、どうしたらいいんだろうと悩みます。そういうときには、先輩に教えてもらったり、その本がいいよと言われれば読んで勉強しています。国家試験であれば、答えは1つか2つしなかいんですけど、就職をするとキリがないくらい答えがあるので、常に勉強をしていかないと遅れていってしまいます。2、3年前の資料を読んでも、知識が遅れているような状況です。また、薬剤の辞書も毎年出ていて、私が学生のときに使っていた辞書には載っていないものがあるほどです。常に新しく、良くなっています。今は、病気で倒れた次の日からリハビリをしているので、どんどんスピードは早くなっていますから、それに追いつかないといけません。私の勉強不足で一番困るのは患者さんです。だから、患者さんが早く家に帰れるように考えると自ずと勉強します。その患者さんに合わせた知識を提供できるようになりたいと思います。毎日勉強する癖をつけるという小さい目標しかまだありませんが。
作業療法士とは、笑顔になれる仕事です。患者さんも、患者さんのご家族も、私自身も。だから常に笑顔で患者さんに接する事を心がけています。患者さん、患者さんの家族が笑顔になったとき、この仕事を選んで本当によかったと思います。