なりたい仕事のことを知る ナリカタ

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一人前のパフュージョニスト(臨床工学技士)になることが目標です

山本 憲子さん臨床工学技士(近畿大学医学部奈良病院 勤務)

  • インタビュー内容・勤務先等は取材当時の情報となります

看護師として働くなかで膨らんだ「人工心肺装置を操作したい」という思い

もの心ついたときから医療関係の仕事に就こうと決めていました。それは、幼くして亡くなった兄の影響が大きかった。小さな頃から医療のあり方について聞かされていたこともあり、高校卒業後には迷わずに看護師の道を選びました。臨床工学技士という仕事との出会いは、看護師として働きはじめてから。心臓血管外科を希望する研修医と出会い、その存在を知りました。看護師を始めて3年目になり、チームのリーダーも任されていましたが、「人工心肺装置を操作したい」、その思いは臨床工学技士について調べるうちにどんどん膨らんでいきました。特に人工心肺の操作は命に直結した責任重大な仕事。看護師を5年以上続けて認定看護師になれば、人工透析などの医療機器を限定的に取り扱いできる資格も得ることが可能になるのですが、それまで待つことができませんでした。臨床工学技士の情報を集めたり、同じ病院で働いていた臨床工学技士から仕事や学校について話を聞きました。これまで看護師として養ってきた技術や知識が活かせる仕事であること、また1年で受験資格ができることから、大阪ハイテクノロジー専門学校の臨床工学技士専攻科に入学することを決めました。

厳しい授業のもと、国家試験に合格

学校では、医学系と工学系に分かれて、それまでに習得できなかった資格や苦手分野を克服していきます。文系の私を待っていたのは、数学や物理などの苦手な工学系の授業でした。また、朝9時から夜9時まで授業がある日もあり、学校のレクリエーションにも専攻科の学生は参加する時間がないほどのハードスケジュールでした。しかし、それも短期間で国家試験を受けるため。冬になると連日のように国家試験対策授業を受けました。その学校の厳しい授業のおかげで、国家試験に合格。また当時の教官に人工心肺をメインに扱いたいと就職にあたっての希望を伝えたところ、心臓外科手術を年間400例以上行う、今働いている近畿大学医学部奈良病院を紹介されました。

忙しい日々のなかで感じる、やりたいことができている充実感

医療機器の保守点検のほか、人工透析や人工心肺装置の操作を行うのが仕事です。同じ医療系でも、看護師の仕事とは全く違います。特に患者さんと関わる機会は人工透析のときくらいで、看護師のときに比べて圧倒的に少ないです。心臓手術では、少なくとも二人の技士が手術に立ち会い、人工心肺装置を操作します。モニターに出てくる心電図の波形はもちろん、執刀している医師が今何をしているのか、次に何をするのかを総合的に判断して、その患者さんにとって一番いい状態を考えて操作するのですが、めちゃくちゃ難しいです。1日で2,3件の手術に立ち会うこともありますし、1件の手術時間が10時間を超えることもあります。日常業務に加えて勉強もしますし、忙しい日々ですが、やりたいことができているという充実感があります。チームワークが大事な職場で、この病院は臨床工学技士が7人と他の病院に比べて少ないですが、しっかり連携ができています。わからないことがあっても、聞いたら何でも教えてくれる先輩たちは、とても頼りになります。人工心肺を使いこなす人を「パフュージョニスト」というのですが、一人前のパフュージョニストになることが私の目標です。